『レッドマン・プリンセス 悪霊皇女』という作品について

1月23日にTwitter上に投稿した連ツイを、こちらにもまとめて貼りつけておきます。

レッドマン・プリンセス 悪霊皇女』は「架空の内親王・星子に、アメリカ合衆国にとって不倶戴天の敵であるネイティブアメリカンの怨霊が憑依し、皇族がアメリカの敵になってしまう」ことで、日米同盟という本邦の自称保守の方々の多くが盲信する幻想が、途端に危険な代物になるという物語です。
本作の第1話はそもそも、2015年7月に描かれました。現政権によって理不尽な憲法解釈の変更――集団的自衛権の行使容認――がなされ、安保法制が強行的に成立へと向かう中でのことです。あんなもの、もたらされる結末は「自衛隊は米軍の二軍になります」以上の何者でもない。
戦後保守の宿痾であるスネ夫イズム=アメポチ奴隷根性に、政治的リアリズムの皮を被った幼稚なマッチョイズムやら歴史修正主義やら何やら、色んな反動的なものがひっついて、こんな悲惨な流れが出来てしまった。
先の世界大戦においてあらゆる意味で無惨を晒した我ら日本人にとって、痛切な反省と未来への希望を込めた、壮大な投企であったはずの平和憲法が、子供騙しの屁理屈で骨抜きにされ、踏みにじられていく。ふざけるなよ、と思いました。愛国者なので。そうして描かれたのがこの漫画です。

当時、私は漫画連載の他に海外アニメのキャラクターデザイン業を抱え、独力で新連載を始める時間的余裕がなかったので、ネーム兼下描きまでを担当し、作画は別の方にお願いする予定でした…が、「この内容には乗れない」という至極妥当な理由でお断りされてしまい、企画は一時棚上げになりました。
それから二年弱、2017年の初頭。副業が一段落して手が空いた時、最初に考えたのが、『レッドマン・プリンセス』を自分の手でやっぱり描こう、ということでした。何でって、あらためて読み返しても、描かなくちゃいけない内容だったからです。

「漫画は純エンタメであれ。目障りな政治的主張などするな」「反権力なんて左翼的な小児病だ」。そういう方もいるでしょう。こちらとしては、サビ抜きの寿司しか食えない奴はファミレス行ったらええがな、としか言えない。(幸い『はぐれアイドル地獄変』というたいへん美味しいファミレスがあります)

2018年。米国との同盟強化は東アジア地域を平和にしましたか? 対岸の火事を煽って戦争で儲ける鬼畜どもの高笑いが、太平洋の向こうから聞こえませんか? 南スーダンPKO、「非戦闘地域」から昨年ひっそり引き揚げさせられた自衛官たちは、何を見てきたのでしょう?
「飛来するミサイルを全て撃墜するなんて絶対に出来ない。相手がミサイルを撃つ動機を無くすことこそ安全への道だ」と、これは内閣官房副長官補・防衛庁運用局長を務めた元防衛官僚、柳澤協二氏の言葉です。政権が勇ましく振りかざす「圧力」でそれが実現しましたか。拉致被害者は救済されますか。
民主主義をただの多数決と履き違え、立法府に本来求められる熟議の過程をとことん形骸化させる現政権の卑劣な国会運営に、慣れきっていませんか。社会保障を切り捨てて経済格差の固定を進める残酷な政策に、「選挙の結果が全てなんだから」と目を瞑っていませんか。
総理大臣とその取り巻きによる身内への利益誘導は、どんな手を使っても不問に付す。不都合な公文書なんて破棄して当たり前。裏切った元お仲間は裁判すら受けさせず獄に繋ぐ一方で、強姦魔でも総理と友達なら無罪放免。そんな明らかな不公正・不正義に、「お上に逆らって何になる」と諦めていませんか。
アジアの経済的盟主の地位などとうに失い、明らかな斜陽時代にある我が国の将来への不安を、何につけても近隣国を貶めることで解消しようとする浅はかな政治家や評論家の振る舞いに、いつのまにか引きずられていませんか。アメリカ怖さに、沖縄という美しい日本国土を内心で捨て石扱いしていませんか。

2015年からの3年間で、私は人の親になりました。自分ひとりの余生なら何とでもなります。ニヒリズムを標榜することも出来た。でも子供のためにあと百年、この国に平和かつ公正な社会であってもらわないと困るのです。と、これは少しウェットな物言いかもしれませんが、偽らざる本心です。
「あの時代、お前は何をやっていたんだ。国が、社会が、人心が壊されていくのを、黙って見ていたのか。物語を作り、絵を描く力があったのに」将来、そう言われたくない。そんなみみっちい気持ちもあります。あまりに小さな抵抗でしょうが、とにかくそんなこんなで『レッドマン・プリンセス』なのです。

普段、Twitterにはあまりちゃんとした文章を上げない私ですが、漫画家として普段とちょっと毛色の違う作品を描いていて、新しい読者層にも届いてほしい、という切実な思いから、こういうことを書きました。是非、ご一読ください。というかお色気やオカルトもあって普通に面白いよ。いつもどおり。